責任はあるのに決められない、その仕事の境目を見直す

結果を求められても、方法や優先順位を変えられないと行き詰まります。仕事の裁量を具体的な判断単位に分け、相談する材料を作ります。

「裁量がない」と感じるのは、責任だけを渡され、決め方には触れられないときかもしれません。例えば、期限内に仕上げるよう求められる一方で、着手順、使う資料、確認を頼む順番まで固定されている場面です。結果が遅れれば理由を問われるのに、途中の選択を変える道筋がないと、どこを工夫すればよいのか見えにくくなります。

ここで確かめたいのは、自由が多いか少ないかではなく、どの判断が自分の手元から外れているかです。仕事を一続きの塊として眺める代わりに、決める箇所と止まる箇所を追うと、変えたい境目が具体的になります。

どの判断が止まっているのか

裁量の有無は、一語では捉えにくいものです。依頼を受けてから渡すまでには、何から着手するか、どこまで調べるか、誰に確認するか、どの形で示すか、いつ終わりとするかといった判断があります。予算を使えないことと、作業の順番を決められないことも同じではありません。どれか一つが動かせなくても、ほかの判断には余地が残っている場合があります。

見分ける際は、作業が止まった瞬間に注目します。確認待ちで止まったのか、別の仕事を先にする決定を自分で出せなかったのか、選んだ方法を後から差し戻されたのかを、出来事として区別します。『急いでいるのに進まない』という感覚だけでは、必要なのが優先順位の決定なのか、方法の選択なのかは定まりません。止まる位置が毎回同じなら、その位置が境目です。

例えば、報告の提出が遅れた場面で、内容は自分で選べたが並び順だけを毎回承認してもらう必要があったとします。この場合、広げたいのは報告全体の自由ではなく、並び順を決める小さな権限かもしれません。反対に、並び順は変えられても必要な数字が届く時刻を動かせないなら、問題は裁量より入力を待つ工程にあります。依頼から提出までをたどり、同じ理由で二度止まった箇所だけを候補にすると、漠然とした不満を広げずに済みます。

制限に理由がある場合も確かめる

制限があることを、ただちに不信や軽視の表れと決める必要はありません。品質をそろえるために言い回しや確認順が決まっていることもあれば、別の担当が続きの作業をするために、受け渡しの形をそろえていることもあります。制限そのものより、何を守るための制限で、どこまでが現在も必要なのかを確かめるほうが、変えられる場所を見つけやすくなります。

理由を確かめるときは、『変えてはいけない』という言葉を、そのまま終点にしません。誰が次にその仕事を使うのか、何がそろっていないと戻り作業になるのか、変更した場合に誰が見られるのか、という具体に置き換えます。答えが、形式を守ることではなく、特定の項目を漏らさないことにあるなら、形式以外の部分には試せる余地があります。逆に、変更の影響を確かめる相手も手順も見当たらないなら、独断で変えるより先に、確認の通り道を作る必要があります。

例えば、共有用の一覧で列の順番が固定されているとします。後工程の担当がその順番で確認するためなら、列を入れ替えることは相手の手間を増やす可能性があります。しかし、入力する前の情報収集の順番まで同じ理由で固定されるとは限りません。制限の理由が届く地点までを区切って聞けば、『一覧はこの形で渡すが、集め方は変えてよい』という境目が見えることがあります。理由が説明されないことと、理由がないことも同一ではないため、確認できた内容と推測の内容は混ぜないようにします。

一部分だけ裁量を広げる

裁量を広げる提案は、担当全体を任せてほしいという要求だけではありません。変える対象を一つにし、期間や回数を決め、元に戻す条件を先に置くと、周囲も影響を見やすくなります。大きな結果を約束する代わりに、何を比べるかを共有する形です。結果への責任と、途中で試せる判断を同じ大きさにしないことがポイントになります。

例えば、毎週同じ種類の依頼を受けるなら、次の二回だけ着手順を自分で決める試行を提案できます。その際は、必ず守る締切や提出形式は変えず、確認の依頼が増えたか、差し戻しが出たか、予定した時刻に最初の版を渡せたかを見ます。三つとも良くする必要はありません。どの変化が負担や手戻りに結びついたかを見れば、次に残す判断と戻す判断を選べます。

提案の言い方にも境目を入れます。『次の二回は、資料を集める順番だけをこちらで決め、提出時刻と必須項目は変えません。差し戻しが増えるなら元の順番に戻します』のように、変えないもの、変えるもの、終わった後に見るものを一組にします。こうすると、裁量を求める話が抽象的な希望ではなく、仕事の流れを確かめる試行になります。もし変更が難しいと返された場合も、拒否そのものではなく、どの項目に影響が出るのかを尋ねる材料が残ります。

一部分の裁量を広げる考え方は、守るべき手順を壊さず、試した結果を受け取る相手がいる仕事で使いやすいでしょう。即時の対応が必要な場面や、変更を戻せない工程では、個人の試行より決められた手順を優先するほうがよい場合があります。

次に繰り返す仕事では、全体の自由を求める前に、一回だけ変える判断を選びます。そして開始前に『変えない条件』『今回だけ変えること』『終わった後に見る出来事』を一文ずつ相手に渡してください。裁量は、任せられたかどうかを競うためのものではなく、手戻りを増やさずに次の判断を前へ進められる範囲として確かめられます。

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